ハヌマーンの手鏡・その1(KIN238)

ここに記す話は、ちょうど60日前、『13の月の暦』のKIN178(9・鏡)の日(2017.11.17)に体験した出来事である。

NPOクリカの活動で毎年訪れているカトマンズ。滞在最終日だったその日は、早朝5:30に起きてボダナートの一角で待ち合わせ、そこから天真体道の道友・木村悟郎さんの運転でタメル地区へと向かった。朝の7〜9時だけを相談時間にしているという不思議なシャーマンを訪ねるためだ。

そのシャーマン(現地ではビールと呼ばれている)についての話を聞いたのは、ちょうど1年前(2016年)のカトマンズ滞在最終日だった。日当たりの良いホテルの庭で、朝食を頂きながら話していた時の事だ。ウサさんが「掌に映像を映して見せるシャーマン」についての体験談をシェアして下さったのだ。

何でも、相談者の掌に靴墨のような黒い何かを塗り、シャーマンの指示にしたがってそこをジッと見ていると、まるで映画のように、「無くし物がある場所」とか「泥棒が盗んでいる場面」が動画で見えるというのだ。それも、シャーマンが見るのではなく、相談者自身が見るのだという!

さらに!場合によっては、相談者本人だけではなく、その周囲にいる第三者にもその映像は見えるのだと言う。40年近く不思議世界を探求して来た私にとって、いわゆる能力者自身が映像を観るケースはそれほど珍しくは無くなっていたが、特にそういう感覚がある訳でもない相談者や、第三者にも同じ映像が見えるというのは大変な驚きであった。

何しろ、単に映像が見えるだけでなく、それによって実際に無くし物が見つかったり、盗人が判明したりするのを、目の前にいるウサさんが何度か体験していると言うのだ。しかも、悟郎さんをネパールにスカウトして行ったウサさんは、京大の大学院で心理学を学んだ才媛で、NGOマヤネットワークの代表として多様な分野で実務をバリバリこなしている方である。

又聞きの噂話程度なら「面白いね〜」で済ましたと思うが、そういう人が直に体験しているとなると話は違って来る。可能なら是非自分も体験してみたいと思ったし、周囲からでも映像が見られるのならそれだけでも十分だと思った。しかし、残念ながらその時はもう帰国せねばならないタイミングだったのだ。

そして1年後の2017年。これまでで最も短い滞在日数ではあったが、彼らが経営するマヤ・ベーカリー・レストラン(Maya Dining Bar)で美味しいものを頂いたりしながら相談して、最終日に”ビール”(シャーマン)のところに行く事が決まったのだった。

ビールの所に行くなら、何か「無くし物」とか「人探し」とかの相談事が必要だという事で、私は「悟郎さんがネパールに移住する際、日本から送った何箱もの段ボールが丸々行方不明になったと聞いたけど、それがどうなったか観てもらえば?」と提案。ウサさんもちょうど「失せ物」があるとの事で、その二本立てで行こうという話になった。

タメル方面に向かう車の中からウサさんがカフェのネワール人スタッフに電話し、バイクに乗ったその彼が途中で合流。彼のガイドでまだシャッターの下りている店が多い通りの脇で車を止めた。多民族国家のネパールでは、民族ごとに風習が違ったりするので、ネワール人ビールの所に行くならネワールの人の縁が必要になる。

早くから開いている売店の横の細い道を入り、民家の軒先をくぐるようにして辿り着いた場所は、6畳位の薄暗い部屋で、相談者数名とビールと思しき男性の人影が、その後ろにあるガラス窓からの仄かな光に浮かんで見えた(つづく)。