ハヌマーンの手鏡・その4(KIN8)

シャーマニックな技法によって掌に映し出された映像(動画)に、驚きの表情を浮かべているその若い女性に対して、近親者とおぼしき左手の一団から矢継ぎ早に声がかかる。

「何が見えたの!」「誰なの!!」「ねえ、誰なの!!」

同席している人々が、それぞれどういう関係にあるのかはよく分からないが、少なくとも相談に来ている仲間の一団である事は確かで、彼女たちにとってこの相談が生活に直結するような真剣な内容であることも、その態度からは伝わって来る。

悟郎さんによると、若い女性が「オーマイゴット!」の直前に口にしたのは、ネパール語で「信じられない!」的な言葉だったらしいが、よほど驚いた時にしか使わない珍しい表現だそうで、その言葉からも、演技ではない事が伺い知れたという。

結局、その若い女性は口を閉ざしたまま涙を流すばかりで、ビール(シャーマン)が「ここまで」とセッションを終わらせた。左手の近親者一団は納得が行かないようで、「続きは!?」「もう一回やって!」などと執拗に迫っていたが、ビールは「今日はこれ以上はできない。もし、再度やり直すのなら(映像を見る)別な女性を連れて来る必要がある」と言って、お開きとなった。

残念ながら、掌に映し出された映像を見ることは叶わなかったが、想像していた以上に劇的なシーンを目撃できて、私たちは十分満足していた。その上、ビールはQ&Aの時間も取ってくれた。以下に要点をまとめておこう。

・自分の家系は代々この仕事をして来た
・かつては兄弟もやっていたが、今やっているのは自分だけである
・手続きに従ってイニシエーションを受ければ誰でもビールになれる
(特定の家系だけに受け継がれているというものでもないらしい)

てっきり一子相伝みたいなものかと思っていた私達は、「誰でもなれる」というところにちょっと驚かされたが、イニシエーション(入門儀礼)自体にそれなりの条件があるのかもしれない。ちなみに、ウサさんご自身が映像を見たのは、この人のお父さんがビールをやっていた時と、兄弟の誰かがやっていた頃のことで、年齢に関する条件等は若干違っていたようである。

さすがに記念撮影は拒否されてしまったが、私たちは満ち足りた気持ちでビールの家を後にした。ボダナートのマヤ・ベーカリー・レストランに戻って、美味しい朝食をいただきながら振り返っている中でも、面白い発見があった。

精霊が降りてきた部屋の窓

例えば、女性が集中状態に入った時、私は、瞳の様子が変わって、かすかに明るくなったような気がしたのだが、横から覗き込んでいたウサさんによれば、実際に掌が明るくなり始めていたらしい。その後「映像が見えて来そう」となったところで、ビールに場所を移動するよう言われてしまったとの事。

自分だけだと「気のせいかな」と思えることも、異なる角度からの情報があると色々検証できて面白い。そこで、私はLにもどう見えていたのかを聞いてみた。普段そういうモードをオフにしているのは知っているが、『霊性のアート』にも書いた通り、その気になればオーラがフルカラーで見える目を持っているからだ。予想通り、もう一つの視点が得られた。

女性が「掌が明るくなって来た」と言った頃、つまりウサさんがその明るさを認識し、私が女性の目にかすかな変化を認めたちょうどその頃、椅子に座ったビールと、ビールの左側(私達から見て右側)の足元に右膝を立てて床に座っていた女性の右半身だけを包むように、白金の炎のようなオーラが見えたというのだ。

このケースは、特に見ようと思っていなくても見えてしまったというパターンだが、女性が「何か見えて来た」と言うまでは、ビールにも女性にもオーラ的なものは何も見えておらず、「掌が明るくなって来た」と口にしたのとほぼ時を同じくしてオーラも見え始め、ビールが「ここまで」と言った頃には見えなくなったというから、その白金の炎のようなオーラは、映像を見せてくれるという「ハヌマーンの精霊」と関係があったのかもしれない。

さすがに今も「ヒマラヤの神秘」が息づいている国ネパールである。ひと息ついたあと、私達は荷をまとめて悟郎さんに空港まで送ってもらったのだが、その後、悟郎さんは、事務所にちょうどやって来たある人物にビールのことを質問し、さらに興味深い情報を聞き出してくれたのであった(つづく)。

銀河の月9日/KIN8 黄色い銀河の星

*この文章は、『13の月の暦』でKIN178(9・鏡)の日(2017.11.17)に体験した出来事をまとめたものである。
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